主な研究テーマ

●沿岸性動物プランクトンの環境適応機構(西部)
 海洋の沿岸域では生物を取り巻く環境は季節的、あるいはより短い時間スケールで大きく変動します。このような変化に富む環境に対して動物プランクトンはどのように適応しているのでしょうか。動物プランクトンの生活史形質のうち、特に休眠に注目し、その季節性や誘導要因の種内地理的変異を明らかにすることで、変動環境への適応機構やその進化的背景を理解することを目指しています。


●海洋におけるマイクロプラスチックの動態(西部)
 プラスチックによる海洋汚染は地球規模での環境問題となっています。海洋に流入したプラスチックは紫外線や物理的な破砕によって微細化し、やがて沈降することで海洋表層から除去されると考えられていますが、その過程についての理解は進んでいません。海洋表層から海底堆積物に至るマイクロプラスチックの分布を世界の様々な海域において調べることにより、海洋におけるマイクロプラスチックの動態を明らかにする研究に取り組んでいます。

●単細胞プランクトンの光共生(高木)
 単細胞性の動物プランクトンには、植物プランクトンと共生し、光合成による生産物を利用するグループがいます。このような生態(光共生)は、貧栄養な外洋域で栄養戦略として機能していますが、最近ではそれ以外の機能も明らかになりつつあります。特に浮遊性有孔虫に焦点を当て、共生藻の光合成に関する生理特性や、分子生物学的手法を用いて、光共生が果たす役割について理解することを目指しています。

●動物プランクトンの種多様性・生物地理(平井) 
 動物プランクトン種は海洋漂泳区で優占し、既知種だけで7000種を超える多様なグループです。群集構造を迅速かつ網羅的に解明可能なメタバーコーディング法により、地球規模の動物プランクトンの種多様性・生物地理の把握を目指しています。また、メタバーコーディングに必須な遺伝子配列のデータベース整備のため、動物プランクトンの遺伝子データの充実を進め、分類体系の整理も行っています。

●動物プランクトンに感染するウイルスの多様性と生態学的意義(平井)
 動物プランクトンとウイルスは海洋生態系における重要なグループですが、これらの相互作用は理解が進んでいません。この未知なる多様性や生態学的意義を秘める動物プランクトンのウイルスの研究を進めています。動物プランクトンの個体群動態にウイルスが与える影響や、ウイルス感染に対する動物プランクトンの生理応答を分子生物学的手法により調べています。


研究内容の詳細は各教員のページをご覧ください

西部  高木  平井

学生の研究テーマ(2020~)

■放散虫の機能形態学的研究
■太平洋・インド洋外洋域におけるオキアミ類の群集構造と食性解析
■マイクロプラスチックの分布
■マイクロプラスチックが動物プランクトンに及ぼす影響の評価
■太平洋・インド洋における動物プランクトンのメタバーコーディング解析
■北太平洋におけるカイアシ類Metridia pacificaの分類学的再検討
■カイアシ類ノープリウス幼生の生態学的研究
■浮遊性多毛類の進化・多様性
■浮遊性有孔虫の群集構造・共生藻とのパートナーシップ