東京大学大気海洋研究所 底生生物分野

  狩野 泰則(かのうやすのり)

 

職歴

 2002年 3月 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 博士(理学)

 2001年 4月 学振特別研究員 DC2(理学系研究科生物科学専攻)

 2002年 4月 学振特別研究員 PD(国立科学博物館地学研究部)

 2003年 4月 学振特別研究員 PD(東京大学海洋研究所)

 2004年 1月 宮崎大学農学部 生物環境科学科 助手

 2007年 4月 宮崎大学農学部 生物環境科学科 助教

 2010年 1月 東京大学海洋研究所 海洋生態系動態部門 准教授

 2010年 4月 東京大学大気海洋研究所 海洋生態系動態部門 准教授

 2010年 4月 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 担当

       

学会関連

 日本貝類学会 評議員 (Apr 2009–),副会長 (2016–2019),

  庶務幹事 (Apr 2019–),Venus 編集委員 (Apr 2013–)

 Journal of Molluscan Studies, Associate Editor (Feb 2010–)

 Unitas Malacologica, Secretary (2019–)

 日本ベントス学会 会計 (2010–2014),事務幹事 (2014–2016),

  運営委員 (Apr 2019)


連絡先

 〒277-8564 千葉県柏市柏の葉5-1-5

 東京大学大気海洋研究所 413号室

 海洋生態系動態部門 底生生物分野アクセス

  狩野 泰則 かのうやすのり

  Email: kano_aori.u-tokyo.ac.jp,underscoreをatに

軟体動物(貝類)を中心とした海洋・陸水の底生無脊椎動物について、標本の収集・解析と生体観察に基づいた自然史研究を行っています。現在の主な研究課題は以下の通りです。

 東京大学理学系研究科生物科学専攻の大学院生、日本学術振興会の特別研究員PDを歓迎いたします。


1)深海化学合成群集動物の進化、幼生生態と分散

 深海の熱水噴出孔周辺には、化学合成細菌が作り出す一次生産に支えられた特異な動物群集が生息しています。この群集の成立について理解を深めるために、熱水・冷湧水・沈木などの深海環境、あるいは干潟など浅海の還元環境から巻貝類を採集し、系統解析により環境間の移動の歴史や形態・生態の進化を推定しています。

 また、各種の個体が熱水間をどのように分散するかについて、幼生の飼育、殻体の同位体・元素比解析、集団遺伝解析などの手法を用いた研究を行っています(紹介記事)。


2)両側回遊性貝類の種多様性、生態、進化

 アマオブネ科、コハクカノコ科、トウガタカワニナ科の河川性巻貝は、幼生期に海へ出て分散する両側回遊型の生活環をもち、インド西太平洋の低緯度域島嶼で大きな生物量と高い種多様性を示します。一方、その種分類や生態については、ごく僅かしか知見がない現状です。

 熱帯島嶼における河川動物相の成立と維持機構の解明にむけ、これら巻貝の分布、遺伝的・形態的多様性、種分類、系統および進化、行動・生態、初期発生と分散について研究を進めています(紹介記事)。


3)海底洞窟や深海の「生きている化石」研究

 熱帯サンゴ礁水面下の洞窟には、中・古生代からの遺存種が住んでいます。これら遺存種は,現在浅海で栄えている分類群との生存競争に敗れ、太陽光が届かず栄養に乏しい環境にのみ僅かに生き残っているとされ、現生近縁種はしばしば深海に生息します。

 これら海底洞窟や深海の「生きている化石」について、比較解剖・分子系統解析・化石記録の調査から、形態・生態進化の遅滞や多様性の歴史的変遷について検討しています。


4)超深海の多様性と生物地理

 超深海、すなわち水深6,500m以深の海溝は,アクセスの困難さから科学的な調査が遅れており、地球上に残された最後のフロンティアといわれています。なかでも、海溝最深部の動物相について、我々の知見は1960年代からほとんど更新されていません。そこにどのような動物が、何種類すんでいるのか? 何が種の分布を規定し、また種分化はどのように起きるのか? これらの課題に対し、巻貝類を用いた解析を行います(紹介記事)。

 

5)海から陸への進出

 陸上への進出は、生物の進化的放散における飛躍的な一歩でした。例えば節足動物は、陸域の様々な環境を利用することで、莫大な種数の昆虫類に分化しています。一方、多くの動物群にとって、空気中での生活への適応は極めて困難です。殻と蓋をもつ腹足類は、全動物中もっとも陸上進出に適した系統のひとつで、古生代から新生代までに10回以上独立に陸に上がったと考えられています。これらの陸上進出について、分子系統樹構築と形態比較を基礎に研究を行っています(紹介記事)。


6)寄生の進化

 進化過程における寄生性の獲得は、ときに著しい種の多様化をもたらし、また生物間相互作用を通じて宿主の進化や生態系全体にも影響を与えます。海洋における寄生の獲得と寄生生態の多様化について、棘皮動物に寄生するハナゴウナ科と、環形・軟体動物に寄生するトウガタガイ上科の2系統の腹足類を用い、検討を進めています。