アルビンガイのページ

 アメリカの潜水船アルビンに因んで名付けられたアルビンガイ類Alviniconcha spp.は、ヨモツヘグイニナIfremeria nautilei とともに、マリアナトラフや南太平洋の背弧海盆(マヌス海盆、北フィジー海盆、ラウ海盆)の熱水噴出孔周辺の化学合成生物群集で、最も優占する大型の巻貝です。鰓の細胞内に共生する化学合成細菌の作る有機物を利用して生きています。南太平洋には、シロウリガイがほとんどいないので、そのニッチェ(生態学的地位)を、彼らが埋めている格好になります。共にProvaniidae科に属し、共通に祖先種から分かれたと考えられています。
 
マリアナトラフには、アルビンガイAlviniconcha hessleri だけが生息しています。水深1470mの中央マリアナトラフと水深3600mの南マリアナ海嶺の間は、水平距離で約550km離れているにも関らず、若干(有意水準5%)の遺伝的分化が見られるものの、依然として遺伝的交流があることが、ミトコンドリアDNAの塩基配列の基づく集団解析から示されています。
 アルビンガイの仲間は、南太平洋の背弧海盆にも生息していますが、これらはマリアナトラフのアルビンガイとは、遺伝的に異なり、おそらく別の種(おそらく2種)であると考えられます。しかし殻および軟体部の形態の差がほとんどないため、まだ正式に記載はされていません。
さらに2000年夏に発見されたインド洋の熱水噴出孔でも、アルビンガイが採集されています。遺伝子解析の結果、インド洋のアルビンガイは、全ての太平洋のアルビンガイ類の共通先祖から枝分かれした可能性が高いことがわかり、近々新種として記載される予定です。
 
一方、ヨモツヘグイニナの分布域は、南太平洋に限られています。また北フィジー海盆とマヌス海盆のアルビンガイ集団の間に遺伝的な差異が検出されないのに対し、ヨモツヘグイニナでは、両海盆の集団は、完全に遺伝的に独立しています。アルビンガイ類は、殻の形態からプランクトン幼生期を持つと考えられています。ヨモツヘグイニナに関しては、卵サイズの指標となる殻の頂部が成長過程失われるため、幼生型は不明ですが、彼等の分布域の狭さや、遺伝的な分化は、アルビンガイに比べて、幼生の分散能力が低いことを反映しているのかもしれません。
 下の図は、ミトコンドリアDNAの塩基配列に基づいて推定した、これら2つの属の巻貝類の進化過程を模式的に示したものです。

 

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